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『星は歌う』語り

漫画語り

いとこの奏でと二人暮らしのサク。
サクの誕生日、突然家に現れた青年:葵。
周囲のだれもが認めてくれなかった二人の関係、過去を、彼が初めて認めてくれた。
そこから始まるふたりの物語。
互いに互いのこころを、無意識にほどきあっていく。
2人が紡ぐ、ふたつとひとつの人生。

 

きれいにまとめてみましたが、中身は、はっきりと言って、きれいではない。
前作、フルーツバスケットにあったファンタジーが一切なくなり、
現実の一つがつむがれたお話。
人間臭く、泥臭くあがく、少女と少年のお話。

くっついて離れてくっついて、なんて、生易しい少女マンガではない。
希望が見えて、絶望して、はいあがって、また落されて、ゴール手前でまた落されて。
それでも彼らはあきらめない。
決めた未来に向かって、泥臭く生き続ける。

 

葵が東京に戻るのが、意味がわからないと。
そう思った人もいるだろう。
ああただの少女漫画ならば、葵は東京を捨ててサクの隣で生き続けるだろう。
東京の話はもう終わったのだと。
過去に背を向けて未来を見ることをするだろう。

 

けれど、これは「星は歌う」。

これは人生を描いた物語。

葵は、東京に戻ることを選んだ。
彼を待つ者に寄り添うことを、背負うことを選んだ。
自分の過去を、自分の罪を、背負う覚悟。

恋に生きるのは美しい。
けれど、美しいだけが人生なのか。漫画なのか。
理解されずとも、なんと言われようとも、誇りを持って東京へ戻る葵は格好いい。
そしてそれを、受け止めたサクも、格好いい。

東京を投げ打って、サクを選ぶこともできた。
葵を虐げて、泣きわめいてすがりつくこともできた。
それでも二人はそれをしなかった。
このふたつを選ぶことが間違っているとは言わない。
けれども、人の人生を背負うこと、それを受け止めること。
感情に任せるよりも、格好いい決断だと、私は思う。


何気ない言葉が相手を救って。
そうして救われた人が、相手を愛して。
愛が闇を晴らして、溶かして、
その中にあるものが、温かくふたりを包み込む。
そうして温かいものが外からひやされて、
彼らの決意となっていく。
そんな、物語。だと思った。

自分が自分でいることが、誰かを救うこと、忘れないで。

 

目を背けたくなるような、ストーリー展開。
たしかに、お世辞にも心躍るようなものではない。
けれどもその先にある、二人の決断。未来。
フルーツバスケットとはまた違う人生を、一人でも多くの人に見届けてほしいと思います。